地球での時間は3年が過ぎようとしていた。
現在は新しい惑星へと向かうべく14番目の先遣隊の準備が着々と進んでいる。
コロンビアへの世間の関心は徐々に薄れつつあり、メディアは新しい先遣隊の話で
もちきりになっていった。
また既に移住が進みつつある惑星への移民志願者も増え
宇宙というものがいよいよ身近なものになっていった。
「国防総長閣下。コーヒーをお持ちいたしましたが、いかがいたしましょう?」
「あぁ、そこに置いておいてくれ。」
かなりの広さのあるオフィスの中の机の上に秘書がコーヒーを置いて去っていった。
ゆっくりと寛いでいる暇などない立場の国防総長は一口だけ口をつけて
そのまま仕事を続けている。
コンピューターの画面には"第13次先遣隊コロンビア号報告書"と書かれてある文章が
映し出されている。
それは、コロンビアから自動で送信させてきたデータをまとめたものだった。
中でも船の状態や各隊員の健康状態などには逐一目を通していた。
一通り目を通すと少しだけ安堵の表情を見せ、葉巻きを咥えて火を付けようとした。
「上院議員のカーライル様が打ち合わせにおみえになりましたが、お通しいたしますか?」
「通してくれたまえ」
おそらくこの人間は生れつき横柄な態度なのではなかろうかと思えるほど
その仕草はエラそうで、秘書達からもあまりいい評判は聞かなかったが、
そのリーダーシップの為か或いは産まれ持ったカリスマ性なのか周りの信頼は厚かった。
豪華な机の上には家族の写真などはなく殺風景な事務机という様相だった。
コンピューターのスイッチに手を伸ばし画面を消そうとしてもう一度画面に目をやり
「無事でいてくれよ…」
そう呟いて画面を黒く落とすと、すぐに大きな木製の扉が開き
紺色のスーツを身にまとった中年の紳士が入ってくきた。
その男のもとへ歩み握手を交わしながらお決まりの挨拶をする。
「調子はどうかね?」
「かわらないさ…議会のほうも順調だしな」
「少し痩せたんじゃないかね?」
「あぁダイエットを始めてね」
ソファに腰を下ろし本題へと入り、今後議会で宇宙事業への予算をどのように獲得するか
などが話し合われた。
部屋を出る上院議員はふと振り返り
「コロンビアは順調らしいが…心配だろう?」
「彼女達なら大丈夫だろう」
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