無人探査機は海上を移動していた。
もう先ほどの探査機の画像が途切れたポイントに差し掛かっている。
蜃気楼で霞んでいる先には黒い塔が見え始めていた。
途切れた映像では垂直に見えた塔だったが、若干曲がりねじれているように見える。
探査機のカメラは前方にしか付いておらず、映像を捉えることが出来るのは
消して広い範囲とは言えなかった。
その結果近づくに連れて塔の上部はカメラの範囲をこえてしまい
全容を把握する事は困難になっていた。
塔自体はいびつな円錐形で、人工的に作られたような表面の滑らかさなど皆無で
下部は波による侵食だろうか、かなり変形していた。
その直径は100m程度で、材質は岩なのか金属なのか全く解らない灰色をしている。
無人探査機が塔まで500mの距離まで近付いた瞬間。
上空から何かが接近する気配があった。
カメラに映らない位置から何かに激突されたような振動が伝わり探査機は一度海に落下した。
しばらくして海上にプカリと浮いてきて、推進装置によりまた空中にフワフワと浮上する。
しかしすでにカメラは機能しておらず、落下した際に採取したサンプルから
海水のデータを送ることがやっとの状態になっていた。
「いま、何か当たったよな?」
コロンビアでデータを監視していた教授も、多少混乱した様子だった。
「後方もしくは上方からなんらかの衝撃を受けたようですね」
「塔から岩でも落ちてきたんじゃないのかしら?」
「だったら前に故障した無人探査機はどうなんだよ?
塔からはかなり離れていたし、海の真ん中で岩が当たるような事はないだろ」
「データから何かわからないか?」
「隊長…やはりなにも…」
教授自身も期待をしていた故に何も得られなかった事に苛立ちと落胆が同時に押し寄せたようだ。
しかし、何か閃いた様子で隊長に詰め寄った。
「隊長、私に有人調査を許可していただけないでしょうか?」
もう教授は自分の目で確かめたくていてもたってもいられない様子だ。
「待って!単独では危険だわ」
「搭載してあるのはタンデムの降下艇だよ。二人ならなんとかなる」
「いっそコロンビアで突入って手もあるぜ。どのみち地球には帰れないしな」
やや刹那的なベイルの発言に他の隊員は沈黙させられてしまった。
「隊長。どうします?」
隊長にとって選択肢はいくつかある。
降下艇を使って二人を調査に出し、その後コロンビアでベルーガに突入する。
または手持ちの無人探査機すべてを投入し、原因を突き止める。
さらに塔とは距離をとった位置にコロンビアを突入させる。
しかし、どの方法も多少の時間がかかる事は必至で。
地球からの本隊の到着をさらに遅らせてしまう可能性かなり高い。
「コロンビアでベルーガに突入する。
突入コースは陸地方面。
一度着陸した後、2班に分かれて行動する。
1班は塔及びその周辺の調査。
2版は大気、水質改善に向け作業をする。
また、その他の調査も無人探査機を使い同時に進行する。
ある程度の危険はあるかもしれんが、このミッションは遂行させるぞ。」
そして船は大気圏に突入する。

まだ誰も降り立った事のない大地へ…
− つづく −
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