雲草 「さて、村長(むらおさ)。 事の次第をお聞かせ願いませんか?」
村長 「はい。 近頃、月夜に妖(あやし)の者が現れては村人を荒れ寺に誘い込み喰らうのです。」
村長 「喰らわれた村人はすでに十人を超えております。」
雲草 「何故、荒れ寺を放置しておられるので?」
村長 「その昔この村に戦(いくさ)に敗れたお侍様一行が落ち延びて参りまして。
お侍様が六人、その内の何方(どなた)かの御妻女(ごさいじょ)が一人。 合わせて七人でございました。」
村長 「当時の和尚がお寺に匿われたのですが、
ほどなく追手に見つかりお寺にて和尚と共にお侍様一行は惨い有様になりまして。
和尚を加えた八人の骸(むくろ)は埋葬しましたが村人は忌み嫌いお寺に近づかなくなったのです。
後に来られた和尚は別の場所にお寺を建て直し以降そのままになっている次第にございます。」
雲草 「・・・なるほど。 承知しました。」
村長 「引き受けて下さるか。」
雲草 「それで、荒れ寺はどこに?」
村長 「西の奥にございます。」
時刻(とき)は戻って・・・
― 続く ―
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