時刻(とき)は半日ほど遡(さかのぼ)り・・・
村長 「え? あなた様が その・・・。」
雲草 「いかにも。 私が雲草(もぐさ)にございます。」
雲草 「妖(あやし)の者を封じる術者には見えない でしょ?」
村長 「え、あ いえ。」
村長 「ささ、雲草(もぐさ)様。 こちらへ。」
村長の屋敷に入いって行く雲草。
雲草 「私、身の上は見ての通り浪人でございます。 おそらく私の代で家も絶える事でしょう。 はははは。」
村長 「・・・。」
雲草 「根が怠け者なので百姓は出来ないし、“拙者でござる”の侍も柄(がら)ではありません。」
雲草 「そもそも私は刀を持ち合わせていないもので。」
村長 「しかし それは刀ではありませんか?」
雲草 「これですか?」
紐で封印されている刀を手に取る雲草。
雲草 「持ってみますか?」
カチャ 雲草が放り投げた刀を受け取る村長。
村長 「わっ!」
村長 「その様に粗末な。」
村長 「はて? 刀とはこの様に軽いものでしたかな?」
雲草 「これには刃(やいば)がありません。」
刀を雲草に戻す村長。
雲草 「鞘(さや)の中は空(から)です。」
雲草 「これは故あって預かっているものです。」
村長 「・・・はぁ。 左様で。」
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