「いくぞ!」
晴れた日はいつも散歩に出掛ける。
風が止まると、柔らかな暖かさの冬の日差しを感じる。
いつもの河川敷の公園まで来ると体温も上がったきたようだ。
「そう急かすなよ」
僕よりもタフで力のあるこいつはロッキー。
子犬の時に友達から譲り受けた相棒だ。
体は大きく、一見怖そうに見える。
もう数年間うちの番犬として生活しているのだが
人懐っこい性格からか…あまり優秀な番犬ではないようで
先日は見知らぬセールスマンと庭で遊んでいた。
さらにごく稀に繋いであるリーダーを噛み切り逃走を企てたあげく道に迷い
数時間後、家族に発見され保護されるという事件も起こしている。
なんで犬のくせに自分の家に帰れなくなるんだ?という疑問は残るが
こっぴどく叱られ相当落ち込んでいるようだったので
許してもらえたらしい。
「遊んでくるか?」
公園に着くとリーダーを外し少しだけ自由に走らせてやる。
基本的に逃亡犯のらく印がなくなるわけではないが
呼ぶと戻ってくるので公園内のみ自由行動が許可されている。
ベンチに座って見ていると何やら見付けたらしく
興味津々といって面持ちで草の中に首を突っ込んでいる。
公園の中は同じように犬の散歩をしている人やウォーキングをしている人、
隣のベンチではカップルがまるで春のような暖かさを発している。
ジャージ姿でトレーニングしている学生達の声が遠くから聞こえてくると
なんだかいつも懐かしい気持ちになれる。
ふと、ロッキーがこっちに走ってくる。
「今日は早いじゃないか。どした?」
リーダーを繋げて撫でていると女性が話しかけてきた。
「かわいいワンちゃんですね」
「ロッキーっていうんです」
そう答えると彼女は驚いたようだった。
少しだけ犬の話や世間話をしていて、彼女が動物病院に勤めている事を聞いた。
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