「おいで、ようこ・・・」
彼女は僕を見ることもなく、ただソファーの上に寝そべっている。
彼女はワガママだ。思うが侭に生き、好きに暮らしている。
羨ましく思えるほどに自由なのだ。
ようこが僕の部屋に来てから一年が経とうとしていた。
一人暮らしには慣れていたが、一人の寂しさからか突然現れた
彼女といつのまにか同居している。
すれ違いばかりだがうまくやってきたと、自分でも思っている。

「そろそろ食事にしようか」
僕は彼女の好きな料理を用意し、いつも一緒に食べるようにしていた。
一人の食事はさみしいものだ。少しだけ、彼女の存在がありがたく思える。
「食べ過ぎると太るぞ!」
そう言うと彼女は少しいぶかしげな表情をうかべ、それでもおかまいなしに食べている。
あらためて見るとなかなかスタイルもいい。女性らしい曲線としなやかさがある。
そして吸い込まれるような大きな瞳が魅力的だ。
考えた事もなかったが彼女の年齢も僕は知らないし、ここに来る以前の生活も知らない。
それよりも、ここで一緒に生活している事に何か安堵を感じている。
いつの間にか僕にとってかけがえのないものになっているのかもしれない。

「おやすみなさい」
ベッドに入ると彼女は必ず僕の横に来る。
小さな頭を撫でると嬉しそうな顔をする。それがとても愛しく思える。
本当の所彼女がどう思っているのかは解らないが、それでいいと思っている。

彼女は時折窓の外を見つめ、悲しい目をする。
その瞳の奥で何を想い感じているのかは解らない。
けれども、僕は彼女を手放すつもりはない。
できれば彼女との生活が続けばいいと思う。
「おいで、ようこ・・・」
相変わらず愛想は悪いが、僕の同居人はかわいい。
でも、結婚はできないぁ・・・
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