平蔵の方向に向き直す。
雲草 「はい。 承知しているつもりですが。」
平蔵 「いいや。 解りようもないはず。 断じて解りようも無いはず! 我らが人を喰らうはこの村人の為!」
平蔵 「次の年、この地は飢饉となり村人は飢餓に苦しむ事になる。
我らはできるだけ多くの村人が生き残れるよう口減(くちべ)らしをしているまでの事。」
平蔵 「我らを封じると言うは、転じて村人を殺しめるのと同じ。」
平蔵 「雲草よ。 この煙を解かぬか!」
雲草 「ならば言いましょう。 私はこの村の住人ではありません。
真に村人の為、口減らしの為なれば私を喰らう必要など無いはず。」
雲草 「人を喰らい過ぎた故に見境が無くなりましたか?
己の姿を御覧なさい。 それは魔道に堕(お)ちた者の姿です。」
平蔵 「黙れ! どのみち我らの邪魔立てをするなれば生かしてはおかぬぞ!」
雲草 「私の生業(なりわい)は妖(あやし)の者を封じる事。 それ以上でも以下でもございません。」
平蔵 「・・・よかろう 雲草よ。 我らにはまだ輩(ともがら)がおるのでな。」
平蔵 「皆の者! こやつを喰ろうてしまえぃ!」
雲草 「!」
雲草の背後より話し声が聞こえてくる。
何を喋っているのかは聞き取れないが、何やら楽しげな雑談の様に聞こえる。
その声は次第に近づき、雲草の背後を取り囲む。
雲草 「平蔵さん ミツさん そしてあなた方 あわせて八。」
雲草 「なるほど。 これで出揃いましたな。」
― 続く ―
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